「テロより怖い医療問題」_アメリカ在住のあなたなら知っておくべき現実。(前編)
いかがでしたか?
前編の話だけでも、恐ろしいアメリカ医療の現実がたくさんあったと思います。
でも、オバマケアが出来たことで、保険に加入出来ない人も大きく減って問題は無くなったのでは?あなたもそう思われたと思います。
しかしマイケル・ムーア監督制作の「シッコ」という映画は、アメリカで医療保険に入れない人たちのストーリーでは無く、実は医療保険に加入した2億5,000万人の方々の苦しみを伝える映画だったのです。
その理由を今回の後編で解説します。
そして今でも、例えアメリカの医療保険にご加入されていても、いつも医療破産と隣り合わせているというアメリカの現実をご覧ください。
保険金支払や追加の医療を出来るだけ拒もうとする保険会社

映画のワンシーンに、時速70キロで正面衝突をして意識不明でエマージェンシーに運び込まれた女性のインタビューが出てきます。
後日医療保険会社から彼女のもとに、救急車の使用は保険の対象外との通知が来ました。
理由は、事前に保険会社の承認を取らなかったからだと。
その女性は、「一体いつ許可を取るの?救急車に乗る前に、意識が戻った時?地面に転がった携帯電話を拾って、搬送されながら承認を取れって?クレイジー!!」
続いて登場したのは、9ヶ月の時に両耳が不自由になった女の子。
契約していたシグナ社は、左耳の手術だけを承認しました。その理由は、もう片耳の手術は「実験的に過ぎないので不要である」でした。
片方の耳には有効な手術が、どうしてもう片方には実験的に過ぎないのか。
父親はシグナ社に手紙を書きます。
この事実をマイケル・ムーアに提供し、実態を暴露してもらいますと。
するとすぐにシグナ社から電話が入り、「専門家の再審査により、前回の決定は覆りました。ご安心ください、もう片耳の手術の許可も下りました。」という内容。

次にブルーシールド社、ホライズン・ブルークロス社、BCS社、シグナ社で、全ての病気に適用できるタイプの医療保険に加入した4名の女性が登場。
彼女たちはそれぞれ、後腹膜腫瘍、脳腫瘍、乳がんなどと診断をされました。
全員医療保険に入っているので、病院では高待遇扱い。
様々な検査や手術を勧めてくれました。
しかし保険会社は、4名それぞれに「既往症じゃないか」、「医学的に不要」、「実験的な検査は認めない」、「脳腫瘍の手術をしなくても命に別状は無い」、などとこれ以上の検査や治療を却下。
そしてうち1名はその後死亡、一人はガンが全身に回った。脳腫瘍と言われ検査を勧められたが認められなかった一人は日本でMRIを。脳腫瘍と診断されるも保険会社は脳腫瘍では無いと。その後裁判でようやく認定。
これがアメリカの医療保険業界の深い闇なのです。
否認率10%の維持は至上命令

医療保険会社は患者が診察した病状や治療が妥当かどうかの最終判断を、契約している医療機関の医長に判断を委ねます。
そしてその医長の評価は、どれだけ否認をしたかで決まります。
毎週複数の医長の否認率の結果も、レポートとしてまわってくるそうです。
そして否認率の高い医長は、報酬やボーナスが高額になる仕組みとなっているのです。
ですから、医長たちは診断の詳細は全く見ていません。
ただただ機械的に否認率10%以上を維持しながら、悪評が出回らない範囲で出来るだけ保険金を払わないようにしているだけなのです。
HMO(保険維持機構)などは元々、報奨金を使って医療費を抑えさせるために作られた制度だったのです。
ある審査医師は、米下院公聴会で良心を持って証言しました。
「私は手術をすれば助かる方を否認した。そして死なせた。でも誰からも責められていない。それどころか、保険会社に50万ドルを節約させ、優秀な医長との評判を得て収入も大きく上がった。」と。
こんなクレイジーな医療制度に初めて反旗を翻したのは、実はヒラリー・クリントン

オバマケアがスタートした2014年よりも20年以上も前に、こんな異常なアメリカ医療に国民皆保険を導入しようとした政治家が居ました。
なんとヒラリー・クリントン女史なんです。
ご存知でしたか?
ヒラリー女史は政府でしっかりと管理をした、日本やカナダなどの医療制度に近いものを導入をしようとしましたが、共和党や医療機関、保険会社などから「共産主義化の大きな一歩」と猛反発を受け、その後この政策を封印しました。
多額な政治献金と引き換えに。
そしてその後20年以上の年月を経て、遂にオバマ前大統領がオバマケアの成立にこじつけました。
しかし実態は、共和党などの大反対に遭って骨抜きに近い形骸化されたものとなってしまったのです。
でも、前編でお伝えした無保険者はこの制度開始によって大きく削減しました。
そして新たな問題が起きることとなったのです。
民間の保険会社による国民皆保険は、保険料の高額化と更なる保険金支払の緊縮化を生んだ

ここ2〜3年で、日本の海外旅行保険は殆どの保険会社で大幅な値上げとなりました。
しかし今でも、比較的値上げ幅が緩やかな保険会社も存在します。会社ごとの利益や体力などによって、その差が大きくなるのは当然です。
そしてこの日本の海外旅行保険のような原理が、当然アメリカの保険制度には大きく働くわけです。
オバマケアによって、保険会社は健康状態による加入の拒否ができなくなった上に、どんなに医療費がかかろうとも制度から脱会させることも出来ない。
これが民間の保険会社が利益を重視しながらやっていくとしたら、どういう状態になるのでしょうか。
そうです。経営状態に応じて保険料をどんどん上げていくか、保険金の支払いを出来るだけ拒む以外にありませんよね。
現実問題として、毎年アメリカの医療保険はどんどん値上げの一途となっています。
そして少しでも不要と思われる医療や、高額な医療費がかかりそうな治療は、今でも簡単に受けさせてはくれないのです。
つまり、保険料が一般市民には払うのが厳しいほど高額となり、その上質の悪い医療しか受けられない状況へと転じていったということです。

映画には、ある女性が1歳のお子様の急な高熱でネットワーク以外の病院に緊急で連れて行った際、保険会社からネットワーク病院に行かなければ保険の対象とはしないと言われた話が出てきます。
苦しむお子様の1分1秒を争う状況に、せめて診察だけでもと懇願しますが断られました。
そしてネットワーク病院にようやく辿り着いた時、そのお子様は心肺停止で亡くなりました。
今はネットワーク外でも受診拒否は無いと思いますが、しかしネットワークの病院よりも高額な自己負担が患者に課せられます。
そんなオバマケアは、2019年1月より未加入者に対する罰則が無くなりました。
今、日本人であるあなたをアメリカ医療の深い闇から解放してくれるのは、一つは日本の海外旅行保険を選択することであると私は思います。
海外旅行保険であれば、病院の選択も自由で自己負担も発生しません(病院によっては利用出来ないところや、治療内容によっては保険対象外となるものもあります)。
あなたが望む治療を安心してキャッシュレスで受けることが出来るのです。
保険料だって、通常のアメリカの医療保険よりも安くて補償の手厚いものがあります。
健康なあなたであれば、これで十分アメリカでのもしもに備えることが出来るのです。
但し、海外旅行保険も万能ではありません。
いつ大きく値上がりするかは分かりませんし、海外旅行保険の場合は多額な利用があると更新が出来なくなるからです。
加入前の持病についても保険適用外です。
ですから、アメリカ医療の深い闇から抜け出すには、医療保険と海外旅行保険を状況に応じて適切に備えることが必要ではないかと考えます。
※参考記事
[blogcard url=”https://www.kaigai-hoken.info/medical_care_deep_darkness/” title=”「テロより怖い医療問題」_アメリカ在住のあなたなら知っておくべき現実。(前編)
” content=”アメリカの医療が世界一高く、また医療保険に加入していても医療費破産が後を絶たない理由を解説します。”]
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
海外でも日本でも安心な、日本の海外旅行保険まとめ
- アメリカの医療保険会社は、国民の健康よりも利益を最重視した経営をしているため、出来るだけ高額な治療を受けさせず、そして保険金支払いも出来るだけ否認をします。これもアメリカ保険業界の大きな特徴であり、深い闇なのです。
- オバマ前大統領より20年以上も前に、ヒラリー・クリントン女史が本格的な国民皆保険に着手しようとしました。しかし共和党や医療業界、保険業界からの強い反発と、多額の献金によってこの計画は葬り去られました。
- 鳴り物入りで成立したオバマケアも骨抜きの内容のまま成立したため、未加入者は大きく減りましたが使い勝手は非常に悪く、保険料もどんどんと高額になっているのが現状です。結局医療費破産のリスクからは抜けられていないのです。
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